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SPOT 01

達人案内 きのこ・粘菌写真家 新井文彦さん

原始の森はきのこの楽園
代々守られてきた、阿寒湖

from 北海道釧路市阿寒町

SHORT TRIP Guides - 北海道の小さな旅ガイド edited by コロカル
SHORT TRIP Guides - 北海道の小さな旅ガイド edited by コロカル

太古の姿を残す森と、再生に向かう森。

のこ・粘菌はもちろん、多種多様な生態系に出会える阿寒の森。ここでは、環境指標生物で空気のきれいな場所にしか生息しない地衣類〈サルオガセ〉を見ることもできます。

日本全国の山や森を回ってきた山歩き好きのきのこ・粘菌写真家の新井文彦さんですが、「阿寒の森が一番好きです」ときっぱり断言。
「この森を知ってしまったら、ほかの森に行く気が起きなくなるほど。手の入っていないことや他に人の気配がないことはもちろん、100メートルずれると世界が全く違うので、飽きることがないんです」

周辺の全域が〈阿寒国立公園〉に指定された阿寒湖では、その多くが日本でも数少ない原始の林相をとどめています。

湖からは阿寒のシンボルである活火山の雌阿寒岳を南西に、雄阿寒岳を東にのぞみ、湖畔沿いの自然探勝路では、アイヌ語で「煮え立つ」という意味の泥火山〈ボッケ〉が硫黄の香りを漂わせています。

湖畔にボコボコと沸き立つボッケへは、森を横切る遊歩道が整備されています。

阿寒湖には登山客はもちろん、古くから温泉地として多くの人が訪れました。

湖には国の特別天然記念物である〈マリモ〉が生息。阿寒湖が原産とされるヒメマス、またニジマスやアメマスといった淡水魚も豊富で、阿寒川をはじめ釣りのメッカとしても知られ、針葉樹と広葉樹の混合林である森は紅葉を迎えると黄色と赤の鮮やかなコントラストに彩られます。

雄阿寒岳をのぞむボッケ近くの阿寒湖畔。

この阿寒湖周辺の森の保全・育成に力を注いできたのが、1903年に阿寒の山林5,000ヘクタールの払い下げを受けた九州出身の元政府官僚 前田正名さんに始まる〈前田一歩園財団〉です。
阿寒の雄大な自然に感銘を受けた正名さんは、開発のための伐採を止め森を守り育てていく方針をとり、その意志は息子の前田正次さん、その妻の光子さんへと受け継がれていきます。

特に3代目の故 前田光子さんは今に至る観光地阿寒の基礎をつくりあげ、地元から慕われ、またアイヌの人たちへ土地の一部を無償で貸し生活や進学の基盤をつくったことからアイヌの人々に“ハポ=優しいお母さん”と呼ばれたそうです。

阿寒川源流域をはじめ昼なお暗く鬱蒼とした原生林の森のほかに、阿寒には前田一歩園財団が管理する〈光の森〉と呼ばれる若い森があります。

〈光の森〉で傘替わりになりそうな大きなフキの根本に、クマが食べた跡が。

明治末から大正初期にかけ、木材生産などのため多くの木が伐採された阿寒の森。調査のもと、本来の植生に合った植林がなされ、原生の森林の復元を目指し、自然の力を活かしながら針葉樹と広葉樹の混交林を主とした森づくりが行われています。

〈銀竜草〉は葉緑素を持たず、なんときのこに全面的に依存して生きている植物。別名、幽霊草。

70〜80年を経て再起し始めている光の森は、木々の間から差し込む光が美しいことと、阿寒の森を守り育てた前田光子さんへの敬意を込めて名づけられました。新井さんに案内してもらった光の森の奥には、奇跡的に伐採をまぬがれた樹齢800年といわれるカツラの巨木が今も堂々とした姿でそびえ立っています。
「このカツラを中心に森が再生し始めているんです」そう新井さんは教えてくれました。

〈光の森〉ひとつの幹から3本の木が伸びるカツラの巨木は森の主のようなたたずまい。周りには清らかな空気が流れています。

光の森に横たわる倒木にもさまざまなきのこや粘菌たちを見つけることができ、本来の森のシステムが動いている様子が見てとれます。深い大自然を残す阿寒の森には、それを見守り続ける人たちの姿がありました。

食べられるおいしいきのこ〈タモギタケ〉を発見。地元の人はこのきのこを求めて夜明け頃から森へ入るそうです。摘んで手のひらに載せると、マイタケを上品にしたようないい香りを放っていました。すぐ左に小さな赤い丸を発見。

これは粘菌〈マメホコリ〉の子実体。

「二次元の情報はいっぱい飛び交っているけど、森に行って五感を使って、自分で何を感じるかということが大切。それを楽しいと思うと、よく言われる“癒し”ばかりの森じゃないことがわかってきて、自然のことをより理解しやすくなるはず。ここには、それを体感できる本物の森があると思います」

Information

阿寒ネイチャーセンター

住所 北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉5-3-3

TEL 0154-67-2801

駐車場 あり

Web http://www.akan.co.jp/

※ネイチャーセンターでは阿寒川源流の森、光の森を認定ガイドと一緒に訪れるガイドツアーを行っています。

Profile

新井 文彦(あらい ふみひこ)

きのこ・粘菌写真家。ライター業、コピーライター業も営む。夏から秋にかけては、北海道・道東地方をメインフィールドにアウトドア系ガイド業にもいそしむ。阿寒周辺の森と、日高山脈をこよなく愛する。『ほぼ日刊イトイ新聞』にて毎週菌(金)曜日、「きのこの話」を連載中。2016年10月に新たなきのこの本を上梓予定。著書に『粘菌生活のススメ』(誠文堂新光社)、『きのこのき きになるきのこのきほんのほん』(文一総合出版)など。http://ukigumoclub.com/

photo:yayoi arimoto text:akiko yamamoto

※北海道の森にはヒグマが多く生息しています。森に入るときは、必ずクマ鈴を身につけていきましょう。

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