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SPOT 01

達人案内 写真家 上田大作さん

厳冬期の〈風蓮湖〉
氷上で輝く
漁師の姿に魅せられて

from 北海道野付郡別海町、根室市

SHORT TRIP Guides - 北海道の小さな旅ガイド edited by コロカル
SHORT TRIP Guides - 北海道の小さな旅ガイド edited by コロカル

上田大作「結氷したヤウシュベツ川の夜明け」12月中旬、風蓮湖へと流れるヤウシュベツ川が凍結と融解を繰り返し徐々に結氷する。

「僕は初めて氷上に立ったとき、
ここはまさしく“風”の“連なる”湖だと思いました」

中標津空港から車で1時間30分ほどの風蓮湖は、根室半島のつけ根に位置し、根室市と別海町をまたぐ、周囲約96キロの海水の混ざる汽水湖。
風蓮湖には砂が堆積してできた砂嘴(さし)があり、別海町側にはエゾシカの大規模な越冬地となっている走古丹(はしりこたん)が、根室市側には湿地と原生林が広がる春国岱(しゅんくにたい)があります。
上田さんは“蓮”ではなく、あえて“連”を使い、風連湖と書くことがあるそうです。
語源はアイヌ語で赤い川を指す「フーレペッ」。風蓮湖に注ぐ風蓮川はタンニンなどの成分を含んでおり、これをアイヌの人たちが赤い川と呼んだところからきているそうですが、上田さんは「次から次へと吹き寄せてくる風」を実感し、“風連湖”と呼んでいるのです。

風蓮湖の北側にある〈本別海一本松〉。明治7年から生えている松で、撮影ポイントとして知られた場所。

走古丹を車で走っていると、目の前をエゾシカが闊歩。途中〈走古丹原生花園〉にもなっており、夏には素朴な自然の花畑が広がる。

前ページで紹介したように、厳冬期にこの湖で行われる、伝統的な〈氷下待ち網漁〉をずっと追い続けてきた上田さん。この漁では、氷が張った湖をスノーモービルで移動しながら漁場まで行き、氷の下に小型の定置網を仕掛けていきます。厚さが50センチほどになった氷に穴を開けるのに使われるのはチェーンソー。以前はマサカリが使われており、穴を開けるだけで1日かかったそうです。

「この場所で、まだ撮れていない1枚があるんですよ。早朝に現れる変形太陽を背に、漁をしている風景です」

上田さんはカメラとともに双眼鏡もつねに携帯。朝日が昇る前に蜃気楼が出るのかどうか、双眼鏡で確認するそう。

野付半島から尾岱沼、風蓮湖にかけては、温度差によって光が屈折して蜃気楼が起こり、朝日が変形して見えることがあります。この変形太陽と氷下待ち網漁というふたつが組み合わさることで、道東を象徴する景色になると上田さんは考え、夜明け前にスノーモービルで漁場まで向かい、太陽と漁師さんの位置を計りながら、カメラをスタンバイしているそうです。太陽が変形するのは厳冬期が多いそうですが、近年ではなかなか見られる機会が少なくなっていると言います。

上田大作「厳冬の海に燃ゆる変形太陽」 尾岱沼から撮影した変形太陽。太陽はそのときによって、四角やワイングラス型など、さまざまな形を見せるそう。

上田大作「2月、一羽のオオワシが雨氷をまとった湖畔林から、氷下待ち網漁の様子をじっと見つめている」

マイナス20度にもなる厳冬期、風を遮るもののない氷上。上田さんは朝日が出るような晴れた日だけでなく、強風や吹雪など気象条件が悪い日にも、集中的に撮影を行っているそうです。それはカメラが凍るように冷え切り、長くシャッターに触っていられないような過酷な環境。そんななかで上田さんは辛さを感じることはないのでしょうか?

「早朝はビュービュー風が吹いていて本当に寒いですよ。肌が切れるような感じがしますが、慣れてくると心地よくなってきます。ピーンと張りつめた緊張感があって、身が引き締まる感覚が好きです。それにマイナス20度の世界は、自分のはく息が、光に当たるとダイヤモンドダストのようにキラキラ輝いて、とてもきれいですよ」

根室市槍昔地区から見た風蓮湖。風が強く吹くとシュカブラ(雪紋)が現れることも。

氷下待ち網漁は1〜3月頃まで。水揚げされるのは、チカやコマイ、ワカサギ、ニシンなど。風蓮湖ではカキの養殖を行っている集落もあり、甘くて本当においしいと上田さん。 厳冬期に古くから伝わる人の営みにも想いを馳せながら、風蓮湖の景色を眺めてみてはいかがでしょうか?
漁場は湖上の奥の方にまでおよび、無断で立ち入りすることはできませんが、毎年行われている〈ねむろバードランドフェスティバル〉では、1月29日に氷下待網漁見学とワシ観察エコツアーが企画されています(申し込みは終了)。
また雪道になれていない方で、魚を目当てにやってくるオオワシやオジロワシの見学をしたいなら、根室市の道の駅〈スワン44ねむろ〉がおすすめ。目の前に風蓮湖を一望できるスポットです。

Information

スワン44ねむろ

住所 根室市洛陽1番地

TEL 0153-25-3055

営業時間 11月~3月 9:00~16:00

休業日 11月~4月末頃の毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)

Web http://www.swan44nemuro.com/

※根室駅前バスターミナルから、根室交通「根室・厚床線」で約25分。「白鳥台」下車すぐ。時刻表はこちらからご確認ください。

Profile

上田 大作(うえだ だいさく)

写真家。1977年山口県下関市に生まれる。2005年写真家になることを志し、務めていた会社を退職。タンザニアのセレンゲティ国立公園やンゴロンゴロ保全地域、ガラパゴス諸島などを見聞して歩く。2006年から、北海道の道東地方や大雪山国立公園をおもなフィールドとし撮影を始める。2013年「風連湖—冬の物語」にて田淵行男賞を受賞。受賞記念写真展をニコンサロン(新宿・大阪)で開催。同年〈Imagine Wildlife〉を設立。http://daisaku-ueda.com/
上田さんが参加している写真展『NATURE CRAZYS』(ライフスケープ編集長が推す“常識やぶり”な若き写真家たち)が、富士フイルムフォトサロン仙台(2017年1月12日~2月7日)と富士フイルムフォトサロン名古屋(5月5日〜11日)で開催。 https://www.fujifilm.co.jp/photosalon/sendai/17011201.html

photo:yayoi arimoto text:michiko kurushima

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