3万5000平米の敷地で
時間を忘れて過ごせる豊かさ
「そこの白樺の林と、大きな森と、畑のところ、
ずーっと続いているのが敷地なんです」
オーナーの齊藤知子さんが指す方向には、見渡すかぎりのグリーンな世界。白樺の美しい木立と、広々とした草原、野鳥がさえずる森のある、3万5000平米の敷地。そのなかに佇む、1日わずか3組のみの静けさに満ちた宿〈イージーリビングテラス〉。帯広市内から車で約30分、市街地から遠くないにも関わらず、大自然の真ん中にいるような風景が広がっています。
「宿から眺める風景には他に建物がないのでみなさんびっくりされます。いろいろな国を旅してきた方が、ここはどこかの外国で出会った風景のようだとおっしゃっていました」と話をしてくれたのは、宿のオーナーである齊藤知子さん。
齊藤さんは、1991年に東京から自然豊かな場所で子育てをしたいと家族で移住。3人の子どもたちと過ごした自宅を、子どもたちが巣立ったのを機に改修して、2006年から宿を始めました。
「私はこの場所がすき。みなさんにもこの場所のよさを知ってもらいたくて。疲れている方が癒されるような、静かに過ごせる場所を提供したいと思い始めました」
客室は母屋である〈メインハウス〉の客室と、離れにある独立した〈コテージ〉、〈キャビン〉の3タイプ。それぞれ2〜3名の定員なので、最大でも6〜7名で、広大な敷地をまるで別荘のように静かにゆったりと過ごすことができます。
こちらがメインハウス。メインハウスの客室はツインタイプが1室のみ。広々としたバスルーム付き。コテージ・キャビンともに宿泊客の朝食はこちらで。晴れた日はテラスにて、広大な草原を眺めながらの朝食タイム。
ここは、暮らすように旅をするスタイルが自然にできるような場所。コテージとキャビンにはそれぞれキッチンが付いていて、調理器具はもちろんコーヒーやお茶類、油や調味料、食器類、洗剤と必要なものが揃っています。洗濯機も備えているので、長期滞在にもぴったりです。
メインハウスから離れた場所に建つコテージ。コテージの裏はくるみの林でエゾリスが遊びに来るそう。
コテージのリビングには、キッチンも付いていて冷蔵庫やオーブンレンジ、料理器具、食器類、調味料まで揃っていて自炊も可能。
コテージのベッドルームにはシングルベッドがふたつ。麻100パーセントの心地いいタオルも付いている。「自然に囲まれながらも清潔に過ごせるよう心がけています」と齊藤さん。
2015年にガレージを改装してオープンしたキャビン。ヨツール社製の薪ストーブがしつらえてある。こちらもキッチンや洗濯機付き。
「リピーターの方がとても多いです。最初は1泊で予約していたお客様が気に入ってくださって、もう1泊、もう1泊と、何泊も連泊されるお客様もいらっしゃいます」
宿を開業して今年でちょうど10年目。全国各地、道内のリピーター客も多く、滞在中のお客さんは、乗用式の草刈り機で広大な敷地を草刈りしたり、愛犬のぺぺを散歩したりと、十勝での生活感覚を楽しむ方も多いそう。
「みなさん、『まだこんな時間かぁ、こんな時間にのんびりしているね』とおっしゃいますね」
木立に揺れるハンモックで昼寝をしたり、テラスに座って読書をしたり、時間を忘れて、のんびり、ゆっくりと過ごせます。
朝食は、齊藤さんが丹誠込めて育てた自然農法の野菜を使った料理と、自家製パン。天気のいい日はテラスにて、広々とした庭を眺めながらゆっくりといただけます。「このあたりは野生のエゾジカもいるのですが、畑のスイスチャードが好きみたいで食べに来ることもあるんです」
福寿草やオオバナのエンレイソウなど北海道の野草も自生し、四季折々の美しさを感じられる場所。「季節を変えてきていただけると、うれしいなぁって思います」
それぞれの季節によって宿周辺の自然は姿を変えていきます。なかでも齊藤さんのおすすめは秋。「秋には光が横から差し込み、森が黄金色に染まるのがとってもきれいなんです。夕焼けで空が全部ピンク色に染まったこともありました」
旅人も集まるリビングルームには、齊藤さんが撮影して自作した写真集が置かれています。夕暮れの木立の影、朝のまぶしい光……写真集には刻一刻と変わる自然の美しさが収められていました。
「ここに住んでいると、光と空気が重なる、美しい瞬間があるんですよ」
何もせず、風景を眺めて過ごす1日。わずかな光や空気の変化を、きっと感覚が研ぎ澄まされて感じることでしょう。都会とはちょっと違った時間軸で、暮らすように滞在してみてはいかがでしょう。
「ゆったりと寛いでもらいたい」という想いから、日々宿の手入れをするオーナーの齊藤さん。