「生のプルーンを食べたことはありますか?」
『北海道食べる通信』編集長・林真由さんがそんなふうに話しながら、次におススメしてくれたのは、仁木町で観光農園と直売を行っている〈峠のふもと 紅果園〉のプルーンです。
札幌から車で1時間ほどの北海道南西部、日本海側に位置する仁木町。道内有数のフルーツの産地として知られ、サクランボ、リンゴ、ブドウなどの観光農園が数多くあります。
フルーツをおいしくするのは、なんといってもこの地域の気候。夏が暑く昼夜の温度差が大きいのが特徴で、甘みが増す条件が整っているのです。〈峠のふもと 紅果園〉は、その名の通り峠のふもとにあり、この地域のなかでもより朝晩の冷え込みが強いそうで、「ほどよい酸味と甘味のバランスがいい」と林さんは語ります。
プルーンの旬は初秋。9月の始めには食べごろを迎えます。果物狩りができるこの農園を訪れたならば、木で完熟した生プルーンが食べられるそう。
「木で熟したプルーンは最高においしい状態です。しかも、この農園を営む寒河江仁さんは、さまざまな品種のプルーンをつくっていて食べ比べもできるんですよ」
まだ実が青いプルーン。ひとつの実を大きくするために、この時期に隣り合う実を摘果していくそう。果樹の手入れは機械化が難しくほとんどが手作業。手間をかけておいしく育ちます。
寒河江仁さんは、サラリーマンとして働いた後に1993年に家業を継いで農家となりました。研究熱心で、さまざまな品種の作物を栽培しています。
寒河江農園でつくっているのはプルーンだけでなく、サクランボ、リンゴ、ナシ、モモ、ブルーベリーなど多彩で、それぞれの果樹ごとに何十種類もの品種を栽培しています。耕作面積の大きな北海道では効率化を図るため、単一の作物を栽培することが多いけれど、寒河江さんはこうした流れとはまったく逆の挑戦を行っています。
そのうえ、お米やトウモロコシなども栽培しており、その管理の大変さは想像を絶するものがあるはず。多様性を守り続ける理由は、果樹やトウモロコシ、お米それぞれにファンがいるから。そうした人々に応えたいという一心が寒河江さんの原動力になっています。
「先日、プルーンの摘果の作業を取材しました。そのとき奥さまの志津子さんが『美人になりそうな子を残すのよ』と教えてくれました。子どものように愛情をかけていることが伝わってきました」
奥さまの志津子さん(右)のプルーンの摘果作業を取材する林さん。
『北海道食べる通信』の2016年8月号では、この農園の生プルーンとともに、トウモロコシも紹介しています。寒河江さんが〈昔とうきび〉と呼ぶトウモロコシで、品種は〈ゴールデンクロスバンタム〉。現在のトウモロコシの主流は、果物のように甘いものですが、この品種は甘すぎずうま味が強いのが特徴。流行にとらわれず「昔ながらの本物」にこだわりたいというのが寒河江さんの想いです。
また、農薬を極力控え、見た目よりも味と安全性を追求しています。こうした自身の信念を貫くために、寒河江さんは農協出荷を一切せず、観光農園と直売だけでずっとこの農園を営んでいるそうです。
「ぜひ生のプルーンを味わってほしいですね。食材の旬の時期に現地にいられるというのは、本当にすばらしいことですから」(林さん)
8月中旬。陽の光をいっぱいに浴びて、甘くてジューシーなプルーンが熟していく。
Information

峠のふもと 紅果園
住所 北海道余市郡仁木町大江3-118
TEL 0135-33-5403
果物狩り
時間 概ね9:00~17:00
料金 1000円
※果樹によって変動あり。お持ち帰りは種類によって料金がかかります。果樹の種類と時期はWebサイトをご確認ください。