「武藤浩史さんが焼いてくれたラムチョップに言葉はいりません。なんのお肉を食べているのかわからなくなるおいしさなんです」
その味は形容しがたいと『北海道食べる通信』編集長林真由さんが語るのは、道東、釧路市内から車で35分の酪農と漁業が盛んな白糠町で、約30年間、武藤さんが営む〈茶路めん羊牧場〉のラム肉です。
林さんによると、サフォーク種とポールドーセット種を中心にした約800頭の羊たちがのびのびとした環境で育っています。
武藤さんは帯広畜産大学在学中に羊のおいしさを知り、以来、その魅力に取りつかれるように羊飼いになったそうで、羊のすばらしさをひとりでも多くの人に伝えたいと飼育だけでなく、さまざまな取り組みを行っています。
1987年に35頭の羊を飼い、茶路めん羊牧場を始めた武藤浩史さん。現在は後輩との共同経営体となり、昨年にはファームレストランもオープンさせました。
牧場では春から秋にかけては、できるだけ放牧をしながら、ストレスを与えないような環境で育てているそうです。
そのひとつとして家庭の食卓で羊料理を楽しんでもらえるように、250gから生の羊肉の宅配を行っています。大切な命を無駄にせずに、いろんな部位をテーブルミートとして気軽に食べてほしいという想いから始めたもの。昨年には〈ファームレストランクオーレ〉をオープンさせ、イタリア料理を中心としたさまざまな羊料理と地元の魚介、野菜も含めて提供しており、予約をすれば丸焼きも食べられるそうです。
羊の後足の丸ごとローストをカット。「羊と言われなければいったい何のお肉だろうと思ってしまうほど、市販の輸入羊肉では想像できないジューシーさとうま味があります」と林さん。
また、羊のすべてを使い切りたいという武藤さんの考えは、肉だけでなく羊毛の活用にも及び、ウェブサイトでは毛糸のくつ下や羊毛わたの布団の販売まで行っています。
誌面だけでは伝えきれない生産者の熱き想いを感じてほしいと、林さんは白糠町の特集をした『北海道食べる通信第2号(2015年8月発行)』発売後の2015年11月に〈おかわりツアー〉を企画しました。
このツアーでは、特集で紹介した〈チーズ工房 白糠酪恵舎〉や茶路めん羊牧場などを読者と回り、武藤さんが経営するクオーレで生産者とともに食事を楽しむ会を〈おかわりライブ〉と称して開催しました。
生産者との交流を深める、おかわりツアーの様子。羊舎で羊の様子を見る参加者たち。
「安心・安全が叫ばれている時代、それを数値で見るのではなく、『あの生産者が作ったものなら大丈夫』と、人でわかってもらうのはすてきなこと」
林さんの眼差しの先には、いつも人の姿があります。
「自然の恵みに人の手が加わることによって、いい食材が生まれます。それをまた人が受け取り、きちんと料理することによっておいしいものが食べられる。人と人とのバトンを丁寧につないでいくことがいつも大切だと感じています」
Information

ファームレストランクオーレ
住所 北海道白糠郡白糠町川西
TEL 01547-2-5030
営業時間 火水木日11:30~18:00(17:00LO)
金土11:30~15:00(14:00LO)、18:00~21:00(20:00LO)
定休日 月曜(祝日の場合は営業、翌日振替休日)
※茶路めん羊牧場は、防疫上の衛生区域になるので、許可なく入場はできません。