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SPOT 03

達人案内 作家 池澤夏樹さん

アイヌ民族3代の闘いを
描ききる小説『十勝平野』。
広大な自然を体感できる十勝へ

from 北海道帯広市、浦幌市

SHORT TRIP Guides - 北海道の小さな旅ガイド edited by コロカル
SHORT TRIP Guides - 北海道の小さな旅ガイド edited by コロカル

アイヌの人々から、北海道の開拓史を知る作品

「ばやばやと海の方から西南風(ひかだ)が吹いてきて、雪に覆われた原野は見渡すかぎり飴色に変った。川岸に堆(うずたか)く積もった雪が、ざ、ざ、ざっ、と音をたてて崩れ落ちる。だが凍てつく夜が明け、太陽が昇り始めるころ、広い氷原は無数の宝石をちりばめて美しく輝く。」(第二部 抵抗篇より抜粋)

厳しくも美しい十勝の自然を豊かな情感で描写する作家、上西晴治さん。『十勝平野』は、上西さんの出身地である北海道南東部の浦幌を舞台に、あるアイヌの一族3代の闘いの歴史を、近代から現代にいたる時代の潮流とともに、つぶさに伝える長編小説です。世界の先住民の伝統と人権保護をめざす国際連合が定めた「国際先住民年」の1993年、書き下ろしで上下巻計800ページに及ぶ大作として上梓され、第4回伊藤整文学賞に輝きました。

『十勝平野』は自身の『静かな大地』と共通点のある作品と語る池澤さんは、
「代々受け継がれてきたアイヌの人々の暮らしや血族の物語をリアルに描ききった大河小説です。アイヌ文化のひとつの証言としても読みごたえがあり、アイヌ民族の側から見た北海道開拓の歴史にふれることができます」と解説。

アイヌの人々が狩猟や採集で山をめぐりながら、自然や動物を神として崇め共存していた世界に、次第に和人の文化や法が忍び寄り始めた明治初期、物語は始まります。
世代ごとに主人公が変わってゆく『十勝平野』では、初代が“オコシップ”というアイヌ名を名乗っていますが、和人(日本人)の法によりアイヌ名を禁止され、2代目の周平、3代目の孝二は和人名で登場します。

文明を携えた和人を前に、アイヌの人々の生活が否応なく変化してゆく様子は、開拓によって北海道の自然や生態系が移り変わっていった姿とも重なります。
上巻が明治篇、下巻が大正・昭和篇に分けられ、アイヌ民族に待ち受けるさまざまな困難が語られていくなか、下巻最後の〈新生篇〉では孝二の時代に入り、アイヌ民族の復権への歩みも力強く描かれています。

美しい雪景色が広がる冬の十勝エリア。日高山脈が雄大にそびえる。(photo:十勝観光連盟)

タイトルとなっている広大な十勝平野は、北海道東部に広がる日本有数の畑作・酪農地帯。大雪山系から流れる十勝川をはじめ豊かな水に恵まれ、“十勝晴れ”と呼ばれる日照時間の長さや寒暖の差などの気候から農作物の生産量が多く、北海道の食料自給率(カロリーベース)191%に対して、十勝19市町村ではなんと約1200%にものぼります。

「北海道全体を見ても、食べるものを全て自給自足できるのは大きな強み。今や米もとれるようになったので、主要な食べ物で手に入らないものはないほど。開拓期の乱獲で絶滅しかけた鹿も再び増え、ジビエとして注目されています。北海道の鹿肉はおいしいですよ」と池澤さんは語ります。

(photo:十勝観光連盟)

浦幌は十勝平野の東端にあたる白糠丘陵にかかるまちで、その7割が林野で占められています。地名の語源はアイヌ語の「オラプ・オロ」、「センキュウ(生薬の材料)の多いところ」もしくは「やましゃくやくの多いところ」という意味と言われています。
作中で2代目の周吉が移住しひととき、牧場を開いた海ぎわの土地、昆布刈石(こぶかりいし)には現在、丘の上に展望台が設置され、パノラマで広大な太平洋を望む絶景に出合うことができます。

晴れた日は、襟裳岬や釧路が一望できる昆布刈石展望台。(photo:十勝観光連盟)

広大な十勝平野の北側には、池澤さんの生まれ故郷である帯広のまちが広がっています。JR帯広駅から車で約1時間の距離にある〈八千代牧場〉は、池澤さんおすすめのスポット。幌尻岳の麓、約1000ヘクタールの広大な敷地をもつ牧場では、5月中旬から10月中旬まではのんびりと草を食む牛や馬ののどかな風景が楽しめるほか、十勝産の食材にこだわったレストラン〈カウベルハウス〉や、宿泊施設も併設。ソーセージや乳加工品作り体験もできます。
「帯広から牧場へ向かう間はずっとまっすぐな道が続き、牧場では北海道らしい広さが楽しめますよ」

(photo:十勝観光連盟)

八千代牧場。(photo:十勝観光連盟)

十勝の大地が見せる、厳しくも美しい風景。そして、その自然に寄り添いながら生きるアイヌ民族の姿が克明に刻まれた『十勝平野』が語りかける歴史に、耳を傾けてみませんか。

Book Information

『十勝平野』上・下巻

著者 上西 晴治

出版社 筑摩書房

出版年 1993年

価格 kindle版 上巻 2484円 下巻 2808円

Information

八千代牧場

住所 北海道帯広市八千代町

レストラン カウベルハウス(帯広市畜産研修センター) 

住所 北海道帯広市八千代町西4線194

TEL 0155-60-2919

営業時間 11:00~17:00(オーダーストップは16:30)

休業日 11月1日~3月31日の月曜日(月曜日が祝祭日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)

駐車場 あり

Web http://obihiro-bussan.jp/cowbell_house

Profile

池澤 夏樹(いけざわ なつき)

作家。1945年、北海道帯広市生まれ。小学校から後は東京育ち。30代の3年をギリシャで、4-50代の10年を沖縄で、60代の5年をフランスで過ごし、今は札幌在住。ギリシャ時代より詩と翻訳を起点に執筆活動に入る。1984年『夏の朝の成層圏』で長篇小説デビュー。1987年発表の『スティル・ライフ』で第98回芥川賞を受賞。『母なる自然のおっぱい』(読売文学賞)、『マシアス・ギリの失脚』(谷崎潤一郎賞)、『楽しい終末』(伊藤整文学賞)、『花を運ぶ妹』(毎日出版文化賞)、『静かな大地』(親鸞賞)など。自然と人間の関係について明晰な思索を重ね、数々の作品を生んでいる。
2014年より全著作の電子化プロジェクト「impala e-books」を開始。また「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」全30巻に続き、「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」全30巻の刊行を開始。http://www.impala.jp/

photo:yayoi arimoto(book) text:akiko yamamoto

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