エゾシカ革で作る一点物〜24KIRIKOのビジョン

エゾシカ革で作る一点物〜24KIRIKOのビジョン

エゾシカは北海道全域に生息する野生動物です。乱獲で一時は絶滅寸前まで減少しましたが、保護政策により個体数は急速に増加。現在、農作物への被害や土壌侵食、交通事故などが課題となっています。


そんなエゾシカから生まれた革製品ブランド「24KIRIKO」。高瀬季里子さんが手がける一点物のバッグや財布は、廃棄されていたエゾシカ革に新たな価値を与え、北海道の自然と職人技が生み出す唯一無二の工芸品です。


廃棄されるエゾシカの革に新しい命を与えたい

個体数を制御するために駆除されたエゾシカは、食肉やペットフードなどに利用されますが、角と皮はほとんど廃棄されていました。高瀬さんは「廃棄されるシカの革に新しい命を与える」というビジョンで2008年からエゾシカ革製品の開発を開始。2012年にブランド「24KIRIKO」を立ち上げました。ブランド名は、当時の彼女の年齢「24」と、名前の「季里子(KIRIKO)」に由来しています。

見向きもされなかったエゾシカ革を素材に

ブランド立ち上げ当初、高瀬さんは地元の業者に何度も門前払いされました。当時は、北海道産のエゾシカ革を使った製品など誰も考えなかったのです。野生動物のエゾシカは個体差が大きく、質のばらつきが多いという課題があります。


また、一般的な牛革と比べ、エゾシカ革の鞣製(なめし)には格段に長い時間と複雑な工程を要するため、革職人からも敬遠されてきました。高瀬さんは業者を一社一社説得し、自らサプライチェーンを構築していかなければなりませんでした。


欠点を個性に変えるコンセプト

高瀬さんが到達したコンセプトは、実にシンプルなものです。エゾシカ革の欠点は、裏を返せば最大の強みになります。天然の傷や色のばらつきは、北海道の自然が刻み込んだ署名であり、世界でたった一つの風合いを生み出すのです。


同じデザインで製造しても、エゾシカ革の特性によって各々がオンリーワンの作品となります。高瀬さんはこの個性を受け入れ、インスピレーション溢れるデザインと組み合わせることで、本当に記憶に残る革製品を生み出しています。


ラグジュアリーとワイルドが融合するデザイン

高瀬さんの代名詞とも呼べる作品がハンドバッグです。しなやかさと力強さを持ちながら、赤や紺といった鮮烈な色合いが映える洗練されたデザイン。まさに、北海道の自然と職人の哲学が凝縮した一点物です。深みのある色合いが中心のカラーバリエーションはシカ革の自然な風合いと調和し、季節や装いに合わせて選べる豊かなラインナップとなっています。


24KIRIKOの作品は、国内にとどまらず国際的な人気も獲得しています。イタリア・ミラノで開催される世界的なデザイン見本市「サローネ・デル・モービレ」に出展され、世界的なクリエーターや買い手から注目を集めています。


害獣と呼ばれるエゾシカから価値を生み出す

北海道では、山林や田畑を荒らすエゾシカを「害獣」と呼んでいる現状があります。高瀬さんは、美しいデザインを通じてこの認識を改めようとしています。命あるシカが、世界で一つのバッグになる。その物語と美しさを通じ、北海道の自然との向き合い方を伝えたいのです。


「エゾシカとの共生は大きな課題です。自分の作品を通じて、エゾシカの個体数管理にも貢献していきたい。この持続可能な方法で、北海道の自然と文化の価値を世界に伝えたいと思っています」と高瀬さんは語ります。


北海道でしかできないものづくりを追求する

高瀬さんのブランド哲学の根底にあるのは、「北海道でしかできない商品を作る」という思い。歴史的に日本のフロンティアである北海道で、新しい可能性を切り開く精神を込めたものづくりを展開しているのです。


また、北海道の先住民族アイヌの文化にも深い敬意を払っています。アイヌ文化ではエゾシカはカムイ(神)にはなりませんでしたが、高瀬さんはあえてアイヌ紋様をバッグに取り入れています。これはアイヌの豊かな文化を次世代へ伝え、リスペクトする行為。ブランドを通じ、北海道の歴史と文化の継承に貢献しています。


北海道の自然と職人技を身に纏うということ

24KIRIKOのバッグや財布を手に取ることは、単に美しいものを所有することではありません。北海道の自然と人間、伝統と革新が共存する物語を身に纏うということです。

エゾシカの命の尊さ、北海道の自然との向き合い方、アイヌの文化へのリスペクト——それらすべてが、一つのバッグに凝縮されています。使い込むほど深みが増す革の表情は、持ち主のストーリーと一緒に成長していきます。


「エゾシカは私のライフワーク」と語る高瀬さん。彼女の創作活動は、北海道の課題に美しく立ち向かう姿勢そのものです。北海道を訪れた際は、世界で一つだけのエゾシカ革製品に出会い、北海道の豊かさと職人の思いを感じてみてはいかがでしょう。


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