ヨーロッパの美学と北海道の自然を融合させる家具工房

ヨーロッパの美学と北海道の自然を融合させる家具工房

札幌から車で約2時間、JRで約90分の旭川市は北海道第2の都市です。雄大な大雪山系の山々は登山やスキーの拠点として知られていますが、この地域は日本を代表する家具産地でもあります。かつて軍事施設への木材供給地だった旭川周辺は、戦後いち早く家具産業へ事業転換。現在では小規模な工房から大規模な製造施設まで、35社以上の家具メーカーが活躍しています。

欧州のデザインを北海道の素材で再現する

今回紹介する「北の住まい設計社」は、旭川から約20km離れた東川町に拠点を置いています。ここは北海道で唯一、水道から塩素消毒されていない水が供給される町です。大雪山からの雪解け水が時間をかけてゆっくり地下を流れ、その清浄な地下水が生活用水として使われているのです。この優れた水質と雄大な自然環境を求めて、近年はアーティストやデザイナーなど、創作活動に従事する若い世代が移住しています。


同社の創業は1985年。代表の渡邊恭延(わたなべ やすひろ)さんが廃校になった小学校を改修して新たなスタートを切りました。その歩みは1970年代後半にさかのぼります。「スカンジナビアやイギリスなど、ヨーロッパのデザインに常々関心を持っていました。しかしヨーロッパ各地を旅して初めて、北海道が持つ可能性に気づいたんです」と渡邊さんは語ります。


世界を見て故郷に戻ると、その価値がはっきり見えるもの。素晴らしい自然、品質の高い木材、それらすべてが家具づくりに最適な環境でした。しかし、ヨーロッパの洗練されたデザインを北海道の素材で再現できるかどうか、まだ確信が持てなかったといいます。1980年代後半、渡邊さんはスウェーデンの若きデザイナー、ヤコブさんを招きました。外国人が日本、特に北海道で働くことは珍しい時代のことです。彼との協働から、北海道素材とスカンジナビアンデザインの融合が始まりました。


本当の意味で『長く使える家具』を作る

スカンジナビアンデザインの本質である「シンプルさ」「機能性」「耐久性」は、今もなお北の住まい設計社の家具に息づいています。現在のスタッフはすべて日本人ですが、その設計哲学は脈々と受け継がれています。


「スカンジナビアと北海道は気候と景観で多くの共通点があります。だからこそ、ここの木の力を生かしたい。北海道の樹木は、世界でも類を見ない強度を持っています」と渡邊さんは語ります。同社は数十年にわたって同じ木材業者と取引を続けており、常に地元産の無垢材を使用しています。「北海道の自然は世界でも指折りです」という言葉に、地元への信頼が表れています。


渡邊さんのもう一つの信念が「サステナビリティ」です。「自然から必要なものだけを取り、それ以上は奪わない。家具を数年で廃棄するようでは環境への負荷が大きすぎます。一生ものか、それ以上に長く使える作品を作る。それが本来の『長く使える家具』という意味だと考えています」。


この考え方は、設計から製造、流通に至るすべての工程に浸透しています。「言うのは簡単ですが、実現するにはサプライチェーン全体で一貫性を保つ必要があります」と指摘する渡邊さん。新型コロナウイルスのパンデミックを経て、世界全体が自分たちの暮らしと環境を見つめ直す時代となった中で、同社の先見的な姿勢は自然な形で時代と調和していきました。


東川町の魅力にいち早く気づいた先駆者

競合企業の多くが旭川に集中する中、渡邊さんは敢えて東川町に拠点を築きました。「当初、この決断を理解してくれる人は多くはありませんでした」。しかし今日、東川町は若いデザイナーやアーティスト、さまざまなクリエイターが移り住む創作の町へと変貌を遂げました。


その先駆者だった渡邊さんは、最近の町の盛況に対して一歩引いた視点を持っています。「流行や時流に左右されることなく、自分たちの使命を貫くことが重要です。これからも、やるべきことに専念していくだけです」と渡邊さんは静かに語ります。


文化や国籍を超えて楽しめる居心地のいい空間

北の住まい設計社は、単なる家具メーカーではありません。ショールーム、セレクトショップ、ベーカリー、カフェレストランを備えた複合施設です。「家庭的で温かみのある雰囲気を作りたくて、その結果として現在のような形になりました」と渡邊さん。この施設が思わぬ効果を生み出しています。「家具はお土産としては購入しにくい商品です。しかし国内外から多くのお客様にお越しいただいています。ここで作った雰囲気が懐かしく感じられ、文化や国籍を超えて皆様に楽しんでいただけるのだと思います」。


北の住まい設計社は、ヨーロッパの美学と北海道の自然が融合した場所。北海道産の自然素材が織りなす居心地の良い空間は、家具を購入する予定がなくても立ち寄る価値のあるスポットです。ショールームで北海道の樹木の力を感じながら、珈琲や焼き菓子、ランチを堪能する時間が待っています。北海道への旅で、ものづくりの哲学と職人の手仕事に触れてみませんか。


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