北海道余市、持続可能なワインパラダイス

北海道余市、持続可能なワインパラダイス

札幌からJRで50分、小樽市の隣に位置する余市町は、自然が共生する場所であり、斜面を覆う広大なブドウの木が示すように、日本のワインの新たな楽園でもあります。ヴィニュロン(ワイン生産者)であるドメーヌ・セルヴァンのフランソワ・セルヴァンさんが余市町を訪問した際、余市ワインを取り巻く環境についてのお話を伺いました。

Profile

シャブリ・プロデューサー

フランソワ・セルヴァンさん

1654年(承応3年)から続くフランスのシャブリ村でブドウ栽培とワイン造りを行ってきた歴史を持つセルヴァン家の7代目当主、シャブリのワインメーカーのパイオニアとしての名声を築いています。

故郷への郷愁

「余市町でのことを思い返すと、自分がまだ日本にいるような気がします。どこを見てもブドウ畑が見えるこの風景はフランス、イタリア、またはナパ・ヴァレーを思い起こさせます。」ブドウ生産者でヴィニュロンのセルヴァンさんにとって、子供の頃の故郷であるフランスのブルゴーニュを想起させるようです。

可能性と肥沃さを備えた土地

セルヴァンさんは次のように述べています。「ここの黒土(くろぼく)は沖積層が豊富で、大きな可能性と肥沃さを備えた土地です。しかし、それ以上に驚くべきは北海道特有の気候です。寒い冬に比べると夏は高温多湿なので、収穫は10月上旬になります。数週間で雪が降る可能性があるため、この気候はワイン産地になりつつある地域にとっては懸念材料となります。そのため、ブドウ生産者やヴィニュロンは、冬の剪定をあきらめて春の早い段階での剪定を開始することになり、これはブドウの休眠期間の原則に合致しません。これらの地域でブドウを栽培するには、揺るぎない意志が必要です。」


その地域の「運」に恵まれる

「もちろんこれらのブドウの木は、自然に成長したのではなく、長年に亘る努力の結晶です。」セルヴァンさんは続けます。「彼らは自身のストーリーを展開し、家族の伝統を築き、その地域の「運」に恵まれることが必要です。私が「運」と言うのは、彼らが先祖代々受け継ぐ伝統の重荷やアペラシオン(原産地統制呼称)の法律に縛られていないからです。ブドウ生産者やヴィニュロンは、独自の方法でテストし、最終的に独自のワインを醸造することができるからです。」

モンガク谷ワイナリー

  • モンガク谷ワイナリー
  • モンガク谷ワイナリー

東京での10年間のサラリーマン生活の後、奥さんと子供たちとこの地に移住してきたモンガク谷ワイナリーの木原茂明さんの例を見てみましょう。「妻のゆうこさんとは北海道で出会い、共に学生でした。卒業後は当然のように上京し、就職し、サラリーマンとしての生き方を模索していましたが、10年後には北海道に帰ろうと約束していました。

北海道でテイスティングしたワイン

「日本のブドウ生産者やヴィニュロンは、想像以上に緻密で繊細です。」とセルヴァンさんは言います。「ぶどうを丁寧にカットして検査し、ぶどうの種を取り出し、果汁を丁寧に絞ります。ワインセラーはブルジョアのパリジャンのようで、そこに入るにはスリッパに履き替える必要があります。ワインセラーは衛生管理がなによりも重要な要素なのです。そして次にテイスティングがありますが、そこではまだ熟成されていないワインが提供されます。そのことをワインメーカーは恐縮しますが、そのワインがとてもクリアで、フルーティーで、まろやかであることを知ることができる機会を得られます。ここの地形と気候は私がブルゴーニュで慣れ親しんだものとは異なりますが、それはシンプルで食材を活かした日本料理のスタイルに通ずるものを感じます。」

ドメーヌ・タカヒコ

  • ドメーヌ・タカヒコ

「余市ワインといえば地域の代表格である曽我貴彦さんのドメーヌ・タカヒコを語らなければなりません。『ドメーヌ・タカヒコ ナナツモリ ピノ・ノワール』は、日本全国で販売されており、しばしば最高級レストランのテーブルに並びます。それは曽我さんの土地への献身、生命への敬意といったものに対するオマージュです。」

余市ワインとは?

  • モンガク谷ワイナリー

「土地の肥沃さやブドウ品種の多様性、日本のワインメーカーの精度が余市ワインに驚くほどのニュアンスと純粋さを与えています。日本人がオーガニックで自然なワインに情熱を注いでいることを私たちは知っています。私自身ワイン生産者として、ブドウ畑、セラー、グラスの細部へのこだわりに非常に驚きました。私たちの地域では、オーガニックワインの味やフレーバーはまだ定義・分類・リスト化されていません。ブドウ品種は本当に最適なのか?テロワール(ブドウ畑を取り巻く自然環境要因)に対応しているのか?これはワイン業界での議論のポイントですが、日本ではまったくありません!北海道でテイスティングしたワインはすべて、キレがあり、華やかなものでした。奇妙で珍しいものは何もありませんでした。太陽と風の恵みを受けた肥沃な土壌、そして日本人ならではの精密さが組み合わさって、これらのワインは素晴らしいものになり、ワインの世界で余市が有名になることは間違いありません。」

私のお気に入りのワイン

  • ドメーヌ・タカヒコ
  • モンガク谷ワイナリー

「最近、英国のジャーナリスト、ティム・アトキンスが私のお気に入りのワインについて尋ねてきました。NIKI Hills Winery、ドメーヌ・タカヒコ、モンガク谷ワイナリーの 3 つです。 私の最も印象的なテイスティング体験は、ブルゴーニュでもボルドーでもなく、ドメーヌ・モンのピノ・グリージョ(白ワイン用ブドウ品種)でした。これらのワインがフランスのテーブルにないのは残念です。彼らはこの地域を『日本のナパ・ヴァレー』にしたいと私に言いましたよね?彼らなら間違いなくできると感じています。」

エコロジストのアプローチ

  • 余市エコビレッジ

夜も更けてきたので、宿泊先の余市エコビレッジに戻る時間になりました。10数年前に坂本純科(さかもと じゅんか)さんによって設立された余市エコビレッジは、エコロジストのコミュニティであるだけでなく、マイクロファームでもあります。ドメーヌ・タカヒコ、モンガク谷ワイナリーからわずか数キロです。もちろん、彼らの背景や性格も異なりますが、同じように静かな決意と、自分のペースで大地と一緒に暮らすワイルドでありながら強く、喜びにさえ満ちた思いを見いだせます。


坂本さんとは(当時、私たちは5人で訪問し、それぞれがここに来るためのテーマを持っていました。)バイオダイナミクス、循環経済、持続可能な開発について話しました。」彼女は「ユートピアは決して遠いものではありません。それは計画の一部です。この場所は、日本人だけでなく、老若男女問わず大歓迎です。1~2ヶ月滞在する人もいれば、それ以上を過ごす人もいます。毎年多くの人がここに戻ってきます。それは関係が形成される方法であり、それが私たちがここにいる理由です。共有し、コミュニケーションするためにエコビレッジは実践しています。朝、ニワトリに餌を与え、この辺りを徘徊する無数のキツネからニワトリを守るために有刺鉄線を設置しなければなりません。これらのエコロジストのアプローチは、この地域に完全にマッチしているものです。」と話しました。

セルヴァンさんは「余市にいる間に、持続可能な開発という明確なテーマを見つけました。今回、私たちが接した個性豊かな方々は、その土地と深く結びつき、努力の結晶を結んでいます。最も重要なことは、このつながりが、この地域が日本と世界の新たなワインの目的地になる可能性を有していることです。」

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